2011年5月7日土曜日

大橋巨泉の美術鑑賞ノート4冊を読む

連休中に図書館でふと手に取った大橋巨泉の美術鑑賞ノート4冊(2冊目から題名は異なる)を読んだ。 JAZZ・競馬・ゴルフ好きで絵には一切関心のなかった彼が、1999年マドリッドのプラド美術館で見た一枚の絵から絵画に没頭。金と暇にあかせて世界中に散らばっている名画を実地で見て書いたのが写真の4冊。ダビンチに始まり、19世紀の印象派で終わるが、20世紀の画家は第五巻で取り上げて完成するそうだ。 読んでいて面白いのは「芸術の評価は時代・風潮・好みによって変わる、僕はそういうものには流されないように努めている」と宣言しているにも拘らず、かなりはっきりと自分の好みを打ち出している点。 ルーベンスは「乳フェチ」レンブラントは「ヒップフェチ」と断定したり、彼の女性の好みはスレンダー小さい胸で、太目・巨乳は嫌いと言い、ルノアールの豊満な女性の絵は暑苦しいと切って捨てている。 印象派についてもルソーは取り上げていない、たくさん見たが基本的に絵が下手というのが外した理由(この点についてはルソーの良さが判らない私も同感)。 
また、二冊目に登場するフェルメールについて、全作品が傑出しているというのは間違いで(もちろん凡庸の画家では書けないが)傑作は十数点だと断定している事。 実は私もフェルメールが好きで図版では全点、実物はルーブル・メトロポリタン・ウイーン美術史美術館で見ているが、本当に傑出しているのは「牛乳をそそぐ女」(日本に貸し出された時鑑賞)まだ実物を見ていない「真珠の耳飾りの少女」「デルフトの眺望」の三点と秘かにに思っていたので全点傑作ではないという見方に頷けた。 時々JAZZの薀蓄を援用したりして脱線するが、その点がむしろ本物の評論家と違って読んでいて飽きない。
 彼の様に「マッチマネー」がないとこれだけの絵画を全部実地で見ることは不可能だが、「サム(乃至リトル)マネー」の範囲で予め見たい絵を決めて、つまみ食い的に美術館で鑑賞する指針として大変参考になった。 妻がすでに友人とオランダに行って見ている大好きなフェルメールの「真珠の首飾りの少女」「デルフトの眺望」を元気なうちに見たいと切実に思ったし、オルセー美術館で見逃したクールベの「世界の起源」(春画?)も見てみたい(それ以外に見たい名画は増えた)。 絵が好きな人にはお勧めの本。

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